■□ ニュース速報 □■

イスラエルのアリエル・シャロン元首相が死去されました。猛将として知られ、「ブルドーザー」と呼ばれ、内外に敵と味方を抱えた巨漢でした。 このニュースでしばしば使った「シャロン将軍」の呼称の方がぴったりします。彼が深く関わった1982年、サブラ・シャティーラ難民キャンプでの虐殺の被害者は800〜3000人(実数不明)と言われます。

イスラエルのヤアロン国防相が、アメリカのケリー国務長官について「ノーベル平和賞が欲しいだけ」とオフレコ発言したのが外に漏れ、アメリカは不快感を示しました。これは、日本、海外の各紙で報道されています。「外交的」とは到底言えない「失言」ということになりますが、イ スラエルの政治指導者たちが、アメリカの「和平仲介」をどう思っているか、本音がよくわかります。


【1月9日(木)】
■UNRWA職員のストに怒り、タイヤ燃やす■

UNRWA職員のストによるサービス停止に怒った、ラーマッラー近郊「ジャザルーン」パレスチナ難民キャンプの若者数十人が、近くの路上でタイヤを燃やし、通行を遮断した。「山積みになったゴミの悪臭で眠られない」「35日ものストで、診療所も学校も閉鎖されたままだ」と若者らは口々に不満を訴えた。

西岸地区で働くUNRWAのパレスチナ人職員は5000人以上、19のキャンプで73万人の難民を担当している。UNRWAの労働組合が賃上げを要求しているが、 UNRWAによると、要求に応じる資金がないという。

UNRWAのクリス・ガネス報道官は、ストで、51000人の児童・生徒が授業を受けられず、42の診療所が閉鎖され、最もケアを必要とする5800人にサービスが行き渡っていないと認めた。(1/9 Reuters)

■ファタハ、6ヶ月後の大統領・議会選挙を提案■

ファタハのアッザーム・アル・アハマド中央委員は、アッバース大統領の要請で近くガザ地区を訪問することを明らかにした。ハマースに対しては、6ヶ月後に大統領とPLC(パレスチナ立法評議会)の選挙を行うことを提案しており、「これ以上会談を重ねる必要はない。回答を待っている」と述べた。(1/11 Maan News)


【1月10日(金)】
■入植者住宅1400戸の入札行うと発表■

イスラエル住宅省は、入植地で、住宅計約1400戸を建設する土地の入札を行うと発表した。 うち600戸が東エルサレム、801戸がその他の西岸地区に予定。 パレスチナ側は発表について、和平実現の努力を台無しにすると批判した。イスラエルの与党第2党「イェシュ・アティド」党首のヤイル・ラピド蔵相は、「間違った計画だ。 実行されないよう全力を尽くす」と批判した。

入植活動に反対しているイスラエルの平和団体「ピース・ナウ」によると、昨年7月のイスラエル=パレスチナ交渉再開以来、イスラエルが公表した入植者住宅新設計画は5349戸にものぼるという。(1/10 Reuters)


【1月11日(土)】
■■シャロン元首相、死去■■

2006年1月に重度の脳卒中で倒れ、意識不明の状態が8年続いていたイスラエルのアリエル・シャロン元首相が同日午後(日本時間同日夜)、死去した。85歳だった。

西岸地区のユダヤ人入植(住宅)地拡大や、パレスチナ地域社会を分断する「分離壁」着工、西岸再占領作戦や頻繁な暗殺など「対テロ攻撃」の徹底など歴代首相の中でも「タカ派」で知られる。 一方、首相として初めて公式にパレスチナ国家樹立受け入れを表明するなど、リアリストとしての柔軟性も備え、イスラエル政治の一時代を築いた。

1928年、イギリス委任統治下のパレスチナに生まれ、イシューヴ(パレスチ ナのユダヤ人社会)の軍 事組織「ハガナ」(イスラエル国防軍の前身)に入隊、第1次中東戦争から第4次中東戦争に従軍、その後、政界に転じ、リクードのベギン内閣では国防相として1982年の第一次レバノン戦争を主導した。 イスラエル軍包囲のもとで、ベイルートのサブラ、シャティーラ難民キャンプにレバノン右派民兵を導入、パレスチナ難民、レバノン人に対する虐殺事件が起きている。シャロン国防相は、その「間接責任」を問われ辞任に追い込まれた。

しかし、2000年9月、リクード党首として、エルサレムのイスラーム聖地「ハラム・アッシャリーフ」を強行訪問、第2次インティファーダを誘発し、翌年、首相として政治の表舞台にカムバック、2002年には西岸地区再占領作戦「防衛の盾」を発動した。2005年にはガ ザ地区から一方的撤退、同年、新党「カディーマ」を結成、党首となり引き続き首相を務めるが、在任中の2006年脳卒中で倒れ、首相職は、同党のエフード・オルメルトに引き継がれた。(各紙、編集者)


【1月12日(日)】
■UNRWAストに怒る難民キャンプ住民とパレスチナ治安部隊が衝突■

長期ストによるUNRWAのサービス停止に怒る、ラーマッラー近郊ジャラズーン難民キャンプの住民と、パレスチナ自治政府警察隊が衝突、警察と救急隊関係者によると、少なくとも50人が負傷した。連日の抗議デモはこの日、最も暴力化、警察隊のムハンマド・ナジャール報道官は「キャンプ住民の怒りはわかるが、無秩序を放置するわけには行かない」と述べた。

警察によると、住民の投石で警官40人が負傷。救急隊によると、警察隊は、石を投げ返したり、上空に発砲するなどし、住民10人以上が負傷したという。(1/12 Reuters)


【1月13日(月)】
■シャロン元首相の国葬■

11日に死去したアリエル・シャロン元首相の国葬が行われ、エルサレムの国会前での追悼式典では、バイデン米副大統領やトニー・ブレア元英首相など18カ国の代表らが参列した。式典では、イスラエル国旗に巻かれた元首相のひつぎを前に、ネタニヤーフ首相が「シャロン氏はイスラエルの最も偉大な軍司令官の一人だった。政治家としても、安全保障のために自ら行動することを示した」と、軍人出身の元首相をたたえた。

故人のひつぎは12日、エルサレムのクネセト(国会)前に安置され、イスラエル放送によると1万人以上の市民が弔問に訪れたという。シャロン氏は13日、生前所 有していたイスラエル南 部ネゲブの農園に埋葬された。イスラエル治安当局は、特別警戒態勢を取り、匿名の治安筋は、ハマースなどに対し「われわれの忍耐力を試すべきではない」と警告した。(1/13 読売、Reuters)


【1月14日(火)】
■イスラエル国防相、ケリー国務長官を酷評■

同日のイスラエル紙Yediot Ahronothによると、イスラエルのヤアロン国防相は、関係者らとの懇談の席上、和平交渉を仲介するケリー米国務長官について、ノーベル平和賞受賞が目当てで「不可解な執着」と「理想主義」にとらわれているなどと酷評していた。アメリカ国務省のサキ報道官は同日、事実なら「無礼で不適切な発言」と不快感を示した。

地元テレビによると、ヤアロン国防相は最近、一部記者団に和平交渉についての見解をオフレコで述べた。 ケリー長官について「ノーベル賞を受賞して、いなくなってくれれば、唯一の救いになるのではないか」「不可解な執着と理想主義の感覚で(仲介を)やっているが、私にパレスチナ人との紛争について教えることなどできない」などと語ったという。

ヤアロ ン国防相はパレスチナ自治区の治安対策に長年関わってきた。ケリー長官は交渉の中でパレスチナ自治区の治安対策に関する提案をし、ヤアロン国防相はその内容に強く反発したとされる。米国務省の反応を受け、ヤアロン国防相の事務所は同日夜、「長官を攻撃する意図はなかった」とのコメントを出した。イスラエルのネタニヤーフ首相も、「我々は国務長官と協力して(和平交渉に)臨んでいる」などと述べた。(1/16 毎日ほか)

■トルコ警察、IHHを捜索■

地元メディアによると、トルコの警察当局は、「国際テロ組織アルカイダを支援した」として、イスタンブールやシリアに近い南部キリス県など6県で、非営利組織の事務所などを一斉捜索し、トルコを拠点とするアルカイダ幹部ら少なくとも28人を拘束した。

捜索対象には2010年5月、イスラエル軍に襲撃されたパレスチナ自治区ガザへの支援船を組織したトルコのイスラーム系組織「人道支援基金(IHH)」も含まれていた。IHHは同日の声明で「我々がテロ組織に関与しているかのように見せるための捜索だ」と非難した。

IHHは過去の選挙でエルドアン首相を支援している。このため今回の捜索は、エルドアン首相と 対立する米国在住のイスラーム穏健派指導者、ギュレン師を支持する一部治安当局者が、「テロ捜査」に見せかけ恣意(しい)的に実施したとの見方もある。(1/16毎日)


【1月15日(水)】
■ファタハ「ハマースからの回答を待っている」■

パレスチナ陣営内の和解問題について、ファタハは声明を発表、(ファタハからの提案に対し)ハマース側からの統一した正式回答を求めた。声明は、ハマース内部から複数の見解が発表されていると指摘、「ハマース指導部が和解を望むなら、正式の一本化された返事をすべきだ」としている。ハマースのメシャアル政治局長とガザ政府のハニーヤ首相は、しばらく時間が欲しいと言っているという。(1/15 Maan News)

■入植者の暴力に抗議の風船■

入植者のパレスチナ人に対する暴力的襲撃に抗議して、ユダヤ系・アラブ系のイスラエル市民数十人のグループが、「値段表」とヘブライ語とアラビア語のスローガンを書いた風船を飛ばした。風船は、テル・アヴィヴからエルサレムの間の数カ所のほか、イスラエル北部のバカ・アル・ガルビーヤなどから放たれた。

「値段表」は、アラブに対する「報復の値段」を意味し、アウトポスト(イスラエルの法律でも違法とされる仮設入植地)の撤去などが行われるたびに、極右の入植者などが、パレスチナ人やイスラエルのアラブ系市民の宗教施設、住宅などに書き込まれる落書き。これに合わせて、クルマや住宅の破壊、教会やモスクへの放火など も頻発している。

国連の人権問題調整事務所によると、「値段表」攻撃は、2006年以来、計2100件にのぼり、単年度では、06年の115件から13年の399件へと、4倍近くに増加。一方、パレスチナ人のオリーヴ収穫作業に対する極右入植者の妨害への苦情件数は、12年から13年の間に半減したとイスラエル軍はいう。 しかし、パレスチナ農民やイスラエルの人権団体は、現場の軍部隊が入植者の妨害行為を止めることはまれだと批判している。(1/15 Haaretz)


【1月16日(木)】
■イスラエル軍のガザ地区空爆で5人負傷■

医療筋によると、イスラエル軍による数回のガザ地区空爆で、子ども4人と女性一人が負傷した。パレスチナ治安当局者は、ハマースの武装部門「アル・カッサーム旅団」の基地も攻撃を受けたと述べた。イスラエル軍は、ガザ地区からのロケット5発に対する報復だとしている。 ロケットは、いずれも「アイアン・ドーム」(防空システム)に遮られて、イスラエル側に被害はなかったという。(1/16 Maan News)

(出典:Haaretz、Maan News、Reuters、共同、毎日、読売)


<注1> 2011年5月、ファタハとハマースは、統一政府の再建 で合意しました。しかし、この合意実施は手間取り、西岸地区とガザ地区の政権は存続しています。このニュースでは、統一政府が実現するまでの間、引き続き、「アッバース大統」「ファイヤード首相」(西岸政権)「ハニーヤ首相」(ガザ政権)の名称を使うことにします。

<注2> 9日の国連総会決議で、パレスチナは、国連によって、ヴァティカン同様「オブザーヴァー国家」として承認されました。「パレスチナ国家」「PLO」「パレスチナ自治政府」(西岸政権とガザ政権)の関係がどうなるのか、国際法的にも微妙な問題がありそうです。パレスチナの組織やパレスチナ人の役職などをどう表現するか、依然として、試行錯誤中です。

<注3> 各ニュース記事末尾の(カッコ)内は、その主なニュース源です。必ずしも、元の記事の翻訳や抄訳ではありません。とくに断らない限り、Webサイト上の情報です。
日本語ニュースの場合、固有名詞の表記などは、編集者の判断で変えることがあります。ご理解をお願いします。

<注4> この速報では、東京外大「日本語で読む中東メディア」(中東ニュース)と、フランス語紙翻訳グループ「ジャリーダ・ファランスィーヤ」による記事を時々利用させていただいております。編集者の責任で、記事を短縮する場合があります。

編集:岩浅紀久

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