■□ ニュース速報 □■
昨年7月に始まったイスラエル・パレスチナ和平交渉は交渉期限の1週間前にファタハ・ハマスの和解合意調印という電撃ニュースで終結を迎えました。
和平交渉の期間中、最後までイスラエルは入植地建設を続けました。これではイスラエルは最初から最後まで交渉をまとめるつもりがなかったと思われても仕方ないでしょう。アッバス大統領にとって次の選択肢はハマスとの3度目の和解合意でした。ハマスにとってもエジプトのムルシー政権が倒され、孤立感を深めていた中でした。両者の利害が一致したのでしょう。
統一政府樹立までの期間が5週間で合意されましたが、5週間では長すぎる、妨害を狙っている ものに時間を与えるだけだと見ている党派もあります。うまく統一政府樹立まで進んだとしても、統一政府に対する思惑がファタハとハマスで違っていることが浮き彫りになっています。さらに選挙まで進んだとしても、西岸でのハマスの立候補者はイスラエルからのすさまじい妨害に合うことでしょう。選挙そのものが成立するかどうかもわかりません。
悲観的なことを並べてもしょうがありません。パレスチナはとにかく次へ向かって一歩を踏み出しました。
過去2度の和解合意が失敗に終わり今回が3度目です。「3度目の正直」になるのでしょうか、それとも「2度あることは3度ある」ことになってしまうのでしょうか。
4月22日(火)
●交渉延長ためのアッバス条件をイスラエルが拒否
交渉延長のために入植地凍結を含む条件をアッバス大統領が持ち出したが、イスラエルは即座に拒否した。9か月にわたる交渉期間の最終日の1週間前に、アッバス大統領は大統領府でのイスラエルジャーリストとの会談で交渉延長の条件リストを提示した。条件は入植地の完全凍結、中止になった囚人釈放、国境策定の議論。(Maan)
4月23日(水)
●PLOとハマス、和解を発表
PLOとハマスは7年間に亘る政治的分裂に終止符を打つと発表した。共同声明では、パレスチナ大統領が来たる選挙の日程を設定することを確認し、両者がカイロ合意とドーハ宣言で合意された和解原則を順守することを強調している。またパレスチナ評議会再開の必要性を強く打ち出した。
ファタハの指導者アザム・アルアハマドは、明白なガイドラインなしにイスラエルとの交渉再開は両者とも受け入れない、また交渉の失敗はイスラエルの非妥協的態度と米国の(イスラエルへの)えこひいきにあると語った。両党派はそれぞれ相手方の政治囚を釈放することで合意した。
また両党派は5週以内に統一政府を樹立することで合意した。統一政府の長はアッバス大統領か、または2006年統一政府時の元副首相ナセル・アルディン・アッシャエル(ハマス)がなる予定。
アッバス大統領は大統領選挙、パレスチナ議会選挙、パレスチナ評議会選挙の日程に関し大統領令を出す。高官によれば選挙は6か月以内に行われる。(Maan)
●イスラエル、和平交渉をキャンセル
PLOとハマス和解のニュースの数時間後、ネタニヤフ首相は、夕方に予定されていたパレスチナとの和平交渉をキャンセルした。(Maan)
4月24日(木)
●PA高官:ハマスが2国家解決を受け入れた
ファタハ高官のジブリル・ラジューブはイスラエルの軍ラジオとのインタビューで、ファタハとハマスの和解合意は2国家解決とイスラエル国家承認を前提にしていると語った。(Haaretz)
●イスラエル外相:パレスチナ和解は実現にはほど遠い
イスラエル外務省諜報部はパレスチナ和解は実現にはほど遠いと見ている。23日夜遅く出された文書で、ファタハとハマスのギャップはかなりあると言明している。外務省政治研究センターは、初期評価のなかで、慌てるにはまだ早い、統一が実行の段階に入るかどうか見極めたほうがよいと勧めている。
万一、西岸でハマスが参加する選挙をPAが実施するつもりならば、イスラエルはそれを許さないと即座にメッセージを出すべきだとギラド・エルダン大臣が語った。また、かつてハマスを選挙に参加させたという、オルメルト政府が犯した誤りをイスラエルは繰り返すべきではないと も語った。(Haaretz)
4月25日(金)
●オバマ:和平交渉は一息入れる時かも
オバマ大統領は、交渉の一時停止はイスラエル・パレスチナ両者が交渉に替わるものを考えるのに必要かもしれないと語った。(Haaretz)
●西岸の新聞が再度ガザで配布許可
ハニヤ首相(ガザ)広報官は再度来週から西岸で発行された新聞をガザで配布することが認められると語った。これは和解の雰囲気を醸し出すためだと語った。また西岸でガザ発行の新聞の配布が認められることを希望した。(Maan)
4月26日(土)
●米国:和平交渉は棚上げ
ケリー国務相は和平交渉仲裁が失敗したとは考えていない。パレスチナ・イスラエル双方が次の段階に入ったので、棚上げ期間を 設けると25日、ジェン・プサキ米国務省広報官が語った。(Maan)
●DFLP:統一内閣はできるだけ早く実現させるべき
DFLPのサラ・ゼイダンは、統一政府は5週以内でなく2週以内でPLOとハマス間で合意された内容で実現すべきと語った。イスラム聖戦は23日に、実現まで5週は長すぎるとコメントしていた。ハリド・アルバッシュ同上級リーダーは、5週間は和解を妨害しようとするものにチャンスを与えてしまうと語った。(Maan)
4月27日(日)
●ハニヤ首相(ガザ)補佐官:ハマスはイスラエルを認めることが“できない”。
ハニヤ首相(ガザ)のメディア補佐官タヒール・アルヌヌがイスラエル承認を除外しないと言ったと26日ワシントンポストが報じたが 、27日同補佐官は、誤って報じられた。ハマスは党としてはイスラエルを承認”できない”と語った。
同氏は「次のステージで政治的立場を決めるのはPLOの暫定的リーダーシップだ、統一政府はそれとなじまない政治的振る舞いはできないだろう」と強調した。
アッバス大統領は26日、いかなる統一政府も以前から存在している、PLOの原理(非暴力とイスラエル承認を含む)に従うと述べた。アッバス氏の発言に対しハマス高官はAFPに、アッバスの発言は“ほとんど肯定的だ”と語った。
ハニヤ首相補佐官バセム・ナイムは「政治的事柄を扱うのが統一政府の役割ではない。主として3つのこと、パレスチナ諸組織の統一、選挙の準備、そしてガザの再構築がやるべきことだ」と語った。(Maan)
4月28日(月)
●PFLPがPLOの会議から退場
PFLP代表は27日、PLO中央委員会の閉会式で、(統一交渉)最終文書に反対し議場から退場した。ハリダ・ジャッラル同代表は、最終文書は特定の条件の下でイスラエルとの交渉再開を含んでいることを理由にあげた。(Maan)
●米国はパレスチナ統一政府との交渉でイスラエル支持を約束していた
ニューヨーク・タイムズによれば、その約束はオバマ大統領の任期の最初と彼の再選ののちになされた。イスラエル高官はニューヨーク・タイムズに、もしハマスがカルテット(米、EU,UN,露)が定めた基準「イスラエル承認、テロの放棄、過去の合意への敬意」を満たさないならば、パレスチナ統一政府との交渉は期待できないだろうという“米国政府からの特別の約束”をかつて取り付けていたと語った。(Haaretz)
4月29日(水)
●PLO:イスラエルは決して“交渉成功のチャンス”を寄こさなかった
和平交渉の期限が28日に切れた。「不幸にも、交渉が成功する機会をイスラエルは決して寄こさなかった」とPLO交渉員サエブ・エラカットは和平交渉期限切れの4月29日を記念する声明で述べた。
「占領地で入植地を建設し、パレスチナ人を殺し、幾多のパレスチナ人家屋を破壊する行為は明らかに、占領を終わらたいとする政府の振る舞いではなく、占領を併合へと欲する政府の振る舞いだ。」
「入植運動を含むイスラエル社会の最も過激な部分を代表している与党連立内閣たるイスラエル政府は、和平を戦略目的として優先することは決してなかった。」
「和平越しに入植とアパルトヘイトを選択することは、政治的にも合法性においてもまた経済的にも高くつくということをイスラエルにはっきり知らしめるために、国際社会は必要とされていることを今こそ実行しなければならないと我々は信じる」
(Maan)
(出典:Maan news, Haaretz)
<注1> 2011年5月、ファタハとハマースは、統一政府の再建 で合意しました。しかし、この合意実施は手間取り、西岸地区とガザ地区の政権は存続しています。このニュースでは、統一政府が実現するまでの間、引き続き、「アッバース大統」「ファイヤード首相」(西岸政権)「ハニーヤ首相」(ガザ政権)の名称を使うことにします。
<注2> 9日の国連総会決議で、パレスチナは、国連によって、ヴァティカン同様「オブザーヴァー国家」として承認されました。「パレスチナ国家」「PLO」「パレスチナ自治政府」(西岸政権とガザ政権)の関係がどうなるのか、国際法的にも微妙な問題がありそうです。パレスチナの組織やパレスチナ人の役職などをどう表現するか、依然として、試行錯誤中です。
<注3> 各ニュース記事末尾の(カッコ)内は、その主なニュース源です。必ずしも、元の記事の翻訳や抄訳ではありません。とくに断らない限り、Webサイト上の情報です。
日本語ニュースの場合、固有名詞の表記などは、編集者の判断で変えることがあります。ご理解をお願いします。
<注4> この速報では、東京外大「日本語で読む中東メディア」(中東ニュース)と、フランス語紙翻訳グループ「ジャリーダ・ファランスィーヤ」による記事を時々利用させていただいております。編集者の責任で、記事を短縮する場合があります。
編集:岩浅紀久
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