■□ ニュース速報 □■

ジェリコの工業団地の進捗レビュー、建設責任者たちと懇談、ラマッラーで旧友たちとの交流、エルサレムの国連中東本部訪問などを終えて、パレスチナから帰国しました。ガザ戦争が停戦になって3ヶ月近く経ちますが、10月24日にシナイ半島で攻撃を受けエジプト兵30人が死亡した事件以来、ハマス・イスラエルの間接交渉は中断したままです。ハマスは目下間接交渉再開へ向けてエジプトと交渉を続けています。

ガザへの建設資材搬入の記事は見られないわけではありませんが、ガザ再建は遅々としか進んでいません。ガザの公共労働住宅相は、イスラエルが5%の資材しか搬入を認めていないと発言しています。ハマスの武闘部門がしびれをきらし、「爆発」を警告しました。ジェリコ工業団地の進捗の遅れも、ガザほどではありませんが、資材搬入遅れが関係しているようです。

また、ハマスとファタハとの和解交渉はほとんど頓挫状態にあります。パレスチナ議会のハマス議員はアッバス大統領が諸悪の根源かのような発言をしています。今回記事にはしませんでしたが、統一政府が成立したものの、これを機能させるためには選挙しかないという発言も見られます。公務員の給料遅配は統一政府の責任だとして、ストライキが発生しています。しかし、給料遅配の原因には、イスラエルによる税金の代理徴収のパレスチナ政府への支払遅延がこと有る毎に、起こっていることを忘れてはなりません。ともあれ、和解交渉進展を見せる記事はほとんど見られません。

パレスチナ人がエルサレムでシナゴーグに侵入しユダヤ人を殺害する事件がおきました。これは日本の新聞でも報じています。エルサレム旧市街のアル・アクサモスク敷地内への立ち入りをめぐり緊張が高まる中、エルサレムはまた大きな事件を抱えました。

11月11日アラファトの命日、各地で追悼の集会がもたれましたが、エルサレムの集会に突然イスラエル軍の車が突っ込んできて催涙弾を乱射しました。それに抗議するため、パレスチナの若者が、車の窓を叩いたところ、若者が車を離れた途端に、兵士が車から降りてきて、若者を後ろから射殺しました。この様子は、近くの商店のモニタービデオに録画されており、エルサレムのテレビニュースで放映されました。イスラエル軍は、若者はナイフを持っていたため、兵士の行動は正当防衛に当る、と発表しましたが、放映されたニュースをみてもナイフは見えず、行動の一部始終からは、誰が見ても正当防衛とは言い難いものだったようです。


以下11月12日以降のニュースです。

11月12日(水)

●西岸地区、入植者がモスクを燃やす

イスラエル人とパレスチナ人の間の緊張が高まる中、イスラエル人入植者が西岸地区でモスクを燃やす事件が起きたとパレスチナ政府高官が語った。同事件は、12日夜明け前にシロ入植地の近くで起きた。西岸地区とイスラエルで起こったパレスチナ人による刺殺事件への報復とみられる。エルサレム旧市街における聖地での緊張の高まりが背景にあると考えられる。少し遡ると、米国主導の和平交渉の頓挫、イスラエルによる今夏のガザ攻撃、東エルサレムでの入植地拡大計画などにより、不穏な状態が続いていたことも大きな要因である。 (Aljazeera)


11月13日(木)

●ケリー国務長官とアッバース会談

13日、イスラエル・パレスチナ間の緊張高まりを受けて、ケリー国務長官とアッバース大統領の会談がヨルダンで行われた。アンマンでの会談の数時間前、東エルサレムでは新たな衝突が起こり、イスラエル警察が催涙ガスやゴム弾を発射。また会談の前日、イスラエルは新たに200戸の入植地住宅計画を承認した。これに対して米国は、大切な会談の前にすることではないと激しく非難。(MaanNews)


11月14日(金)

●ハマス、イスラエルがガザ再建を邪魔するなら「爆発」を、と警告

もしガザ封鎖とガザ再建の障害が続くなら、新たな爆発が発生するだろうと、ハマス武闘組織イッザディーン・アル・カッサム旅団の報道官アブ・ オベイダが語った。ハマスが独自に建設物資を搬入しないよう国連が搬入を仲介している。暫定的再建の仕組みがパレスチナ統一政府の賛助のもとでスタートすると先週国連が発表していた。

再建がスタートしないなら、爆発の責任はすべて敵にある、闘いは終わっていないとアル・オベイダは語った。(MaanNews)


11月15日(土)

●イスラエル、ノルウェイの医師のガザ入りを拒否

ここ何年かガザで外科医としてボランティア活動をしていたノルウェイの医師が永久にガザに戻れないとイスラエルから禁止処置をうけた。マッズ・ギルベルト医師は、今年の夏のイスラエルによる大量虐殺以来ほとんどの期間ガザで働いていたが、10月にエレツ検問所からガザに入ろうとし たところ、ガザ入りを拒否されたと同医師は明らかにした。

イスラエル外務省はそれを認め、ギルベルト医師は「ジキルとハイド」だ、パレスチナの政治的動機のために、政治活動をしているようにみえると語った。同医師はガザではイスラエルの政策を口で非難していた。医療分野の専門家をガザに行かせないのは集団懲罰のひとつの表れだ、と同医師は語った。(MaanNews)


11月16日(日)

●ハマス「エジプトはガザ停戦交渉を今なお引き受ける」

ハマスの高級幹部アル・ザハルは15日、イスラエルとの間接交渉再開の用意がある、エジプトの招待を待っていると語った。エジプトとハマスの交渉は現在進行中だとハーン・ユニスでの会議で彼は語った。

10月2 4日にシナイ半島で発生したエジプト軍部隊への攻撃で、停戦交渉の再開に暗雲が立ち込めた。 攻撃実行者がガザ地区へ逃げ込み、ある者はガザの病院で治療を受けたとエジプトが発言してからは特にそうなった。その情報は間違っているとハマスはエジプト当局に立証したとアル・ザハルは語った。エジプトの治安は最も厳しい状況にあるとハマスは理解していると彼は語った。

ハマスはアラブ諸国には介入しない、アラブ人に銃を向けることはない、アラブ兵特にエジプト兵に1発たりとも銃弾を撃つことは自分たちの考えからして許しがたいことだとアル・ザハルは語った。シナイで起きたことにハマスは関係していない、エジプトはそれをよく知っていると彼は付け加えた。(World Bulletin)


●ハマス議員「アッバスは和解に不要」

パレスチナ議会のハマス側議員ヤヒヤ・ムサは、ファタハとアッバス大統領は(ハマスとファタハの)和解に反対している非難した。

アッバスは、投資プロジェクトやイスラエルとの治安協力、イスラムに対する戦争のために和解に反対しているとヤヒヤ・ムサは語った。和解が先に進むたびに、アッバスは数歩戻そうとしていると同氏は語った。彼はもはや解決には不要だ、パレスチナ民族解放運動にとってむしろ邪魔になる、パレスチナ人の誓約にとってもパレスチナ人の団結にとっても巨大な脅威であるとして、アッバスは去るべきだ、と同議員は語った。(MaanNews)


11月17日(月)

●パレスチナ人運転手、イスラエルのバスで首吊りで発見

16日、パレスチナ人の運転手が、イスラエルのバスの中で、首を吊っているのが発見された。東エルサレムに住むユセフ・ハサン・アル・ラムーニ(32)はイスラエルのエッグドバス会社の運転手で、エルサレム近郊ホツビムターミナルのバスの中で発見された。目撃者がマアンニュースに語ったところでは、就業中にアル・ラムーニのバスがターミナルに停車しているのに気づき、バスの中を見たところ、アル・ラムーニの体がスチール製の横棒にぶら下がっているのを発見した。ハダサ病院へ運んだが、その後死亡と報告された。

イスラエル警察報道官のルバ・サムリは、初動捜査では犯罪の痕はみられない、自殺と見られると語った。しかし同僚のバス運転手は、一人で首を吊るのは不可能な吊られ方であったと語った。また死亡した運転手の兄弟のオサマ・アル・ラムーニは、自殺という見解は受け入れがたい、体にあざがあったと死の前に拷問があったことを示唆した。(MaanNews)

11月18日(火)

●武装パレスチナ人がシナゴーグでユダヤ教徒を殺害

エルサレムで18日、シナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)に武装したパレスチナ人2人が侵入し、中にいたユダヤ教徒を襲撃した。

イスラエル警察によると、少なくともユダヤ人4人が死亡し、7人が負傷した。聖地エルサレムの帰属を巡り、イスラエルとパレスチナの対立が深刻化した10月下旬以降、最多の死傷者数となった。イスラエル当局は、軍や警察の 幹部らを集めた緊急の会議を招集し、治安強化の対応に乗り出した。

現場は、西エルサレムにある敬虔(けいけん)なユダヤ教徒が多く暮らす地域。パレスチナ人2人は18日午前7時ごろ、シナゴーグに押し入り、礼拝に来ていた人々に銃や刃物で襲いかかったという。パレスチナ人2人は、警官との銃撃戦の末に射殺された。2人は東エルサレムに居住し、親族同士だという。事件の後、イスラエル警察はパレスチナ人2人の親戚の家宅捜索をし、12人を拘束した。

アッバス大統領は、誰であろうと市民を殺してはならないと、ユダヤ教徒殺害を非難した。またエルサレム北部ではパレスチナ人が歩行中イスラエル人4人組に足と背中をナイフで刺され重体。 (読売 、MaanNews)

●ガザで公務員ストライキ

パレスチナ統一政府がガザの公務員へ給料を支払わないことに抗議して、政府のすべての省や政府施設へとガザでゼネストが拡大している。公立学校もストに入った。またガザの病院で清掃業務を委託している清掃会社も、従業員に5ヶ月以上給料が支払われていないとして、2日連続のストを実施している。ガザ保健省報道官は、医療に大きな影響があり、ここ2日間手術ができないと語った。(MaanNews)

11月19日(水)

●パレスチナ人の親戚9人が釈放

昨日ユダヤ教徒を襲撃し5人を殺害したパレスチナ人の親戚12人がイスラエル当局に拘束されたが、うち9人は釈放された。また、警官との銃撃戦で射殺されたパレスチナ 人の遺体をイスラエルが家族に返還することを捜査の都合上拒否したことから、衝突が発生した。(maan)

●パレスチナ人バス運転手、エルサレムでストライキ

16日にイスラエルのバス会社で働くパレスチナ人運転手が車中で首を吊って死んだことに抗議して、同バス会社のパレスチナ人運転手が2日目のストに入った。イスラエルの検視解剖と警察の捜査では自殺と断定されたが、パレスチナ人は殺害だったと主張している。(MaanNews)

11月20日(木)

●ガザ再建の建設資材、5%しか搬入されず

ガザの公共労働住宅相のムフィド・アル・ハサインは、ガザ戦争で破壊された住宅に関し最新の統計では、28,000棟が被害をうけ、うち3,000は全壊と発表した。また88,000を超える 影響を受けた家族は国連難民救済機関に登録され、13,000以上の家族が援助を受けている。11,000以上の家族が家屋修復に着手し、900家族が金銭援助を受けた。

壊滅的打撃を受けたクザ地区では100以上の移動住宅が建設され、シュザイーヤ地区では1,000の移動住宅が建設準備中。ガザ全体でさらに1,000の移動住宅が建設準備中。これまで必要な資材のうち5%の搬入しかイスラエルは認めていないとアル・ハサイン大臣は語った。瓦礫の除去は21日から始まる。(MaanNews)

(出典:Aljazeera、MaanNews、World Bulletin、読売)


<注1> 2011年5月、ファタハとハマースは、統一政府の再建 で合意しました。しかし、この合意実施は手間取り、西岸地区とガザ地区の政権は存続しています。このニュースでは、統一政府が実現するまでの間、引き続き、「アッバース大統」「ファイヤード首相」(西岸政権)「ハニーヤ首相」(ガザ政権)の名称を使うことにします。

<注2> 9日の国連総会決議で、パレスチナは、国連によって、ヴァティカン同様「オブザーヴァー国家」として承認されました。「パレスチナ国家」「PLO」「パレスチナ自治政府」(西岸政権とガザ政権)の関係がどうなるのか、国際法的にも微妙な問題がありそうです。パレスチナの組織やパレスチナ人の役職などをどう表現するか、依然として、試行錯誤中です。

<注3> 各ニュース記事末尾の(カッコ)内は、その主なニュース源です。必ずしも、元の記事の翻訳や抄訳ではありません。とくに断らない限り、Webサイト上の情報です。
日本語ニュースの場合、固有名詞の表記などは、編集者の判断で変えることがあります。ご理解をお願いします。

<注4> この速報では、東京外大「日本語で読む中東メディア」(中東ニュース)と、フランス語紙翻訳グループ「ジャリーダ・ファランスィーヤ」による記事を時々利用させていただいております。編集者の責任で、記事を短縮する場合があります。

編集:岩浅紀久

HOMEに戻る